十割そばの呪縛


十割そばの呪縛
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滋味深く評価の高い、奥出雲の在来種「横田小そば」を売りにしているお店に行きました。標高の高い山間部では、寒暖の差など自然からの影響を受け、自然淘汰によって小粒の品種がそれぞれの地に根付いたと考えられています。収量の多い他の品種よりも、風味が強く、甘みもあり、粘りもあり、近年栽培量を増やすことで、多くのそばファンに喜ばれています。
しかし、今回食べたそばは??でした。期待して訪れたお客様に、これが貴重な「横田小そば」ですとお勧めできるそば切りではありませんでした。もそもそして、歯にひっつき、いわゆる「歯ぬかり」がするそばでした。また、切れ切れになっていて「麺」という表現が適さない状態です。味は、噛むとエグミがダイレクトに広がり、甘みなど感じ取れない状態でした。この暑さで玄ソバの状態も悪いのでしょう。また、製粉方法にも原因があるのかもしれません。十割そばをお店のポリシーにされているので、つなぎを入れることはご法度なのでしょう。それなら、製粉方法の改善策や水回しのさらなる工夫等々で、喜んでいただけるようなレベルにまで上げるしかないのです。
気候によるソバの性質や収量の変化から、ソバと自然との関わりがとても大きいことが解ります。自然の恵みをありがたく思い、悪い年はそれなりに楽しんで、また来年に期待する寛容な心をもつことも大切でしょう。松江の有名店のご主人との会話を紹介します。(麺がボロボロしていたため何故かと問いました。)
「玄そばは、日々性質が変わり、つながったりつながらなかったりします。まともな店主なら、粉の悪い時は店を休もうと思われるでしょう。私も以前はそう思っておりましたが、ある本に、ワインは良い年も有れば悪い年もある。良い年のワインだけを出すよりも、悪い年のワインもお出ししてお客様に判断をいただく。何か偉そうな事を言っているようですが、そばもそうかなと思ったりして、あえて恥になるようなそばもお出ししております。本当はこんな年は、店を休みたいというのが本音です。日々製粉するのにも工夫を重ねてやっておりますが、なかなか満足いくようにはなりません。何とか今年の天候が良くなり、新蕎麦の良いものが手に入ることを日々願っている今日この頃です。」まさにこの道一筋の職人だなあと思うお言葉でした。ご主人は、24時間そばと離れずに、試行錯誤して製粉やそば打ちに没頭しておられるため、悪いなりに、そばの風味や食感は満足できる状態にまで仕上げておられます。
玄ソバの保存管理をキッチリされているお店は大丈夫だと思いますが、玄ソバの状態が悪ければ、苦労して製粉してもうまくいかないことがあります。十割そばを提供しているお店は、「十割そばの呪縛」にかかったような試練の時期といえるでしょう。この時期には、「そばがまとまらないため、本日は少量のつなぎを入れています。」と素直に説明し、食べやすいそばに仕上げているお店も存在します。また、そば粉をブレンドしてつながるように工夫されているお店もあります。お店のスタンスに関わることなので、なにも言えません。しかし、少々切れ切れになるのは目を瞑るにしても、地元在来種と謳って、風味の良くないそばを出すと、奥出雲そば全体の評判に影響することが懸念されます。
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